人事評価の項目は、「能力・業績・情意」の3分類を土台に、自社の等級と職種へ落とし込んで設計しましょう。
この記事では、人事評価の項目サンプルの一覧を紹介します。等級別・職種別のサンプル一覧、ウェイト配分の考え方、作り方の5ステップ、つまずきやすい4パターンと改善策までを扱いますので、ぜひ最後までご覧ください。
人事評価の項目とは|まず押さえる3分類
人事評価の項目は、大きく「能力評価・業績評価・情意評価」の3つに分類できます。3つは測る対象がそれぞれ異なるため、そろえておくとどれか1つの軸に評価が偏りにくくなります。
能力・業績・情意で測るものが違う
この3分類は、国家公務員の人事評価でも採用されている考え方が土台にあります。人事院は人事評価を「能力の発揮状況を見る『能力評価』及び役割を明確化した上で挙げた業績を見る『業績評価』で構成」すると説明しています※1。民間企業では、ここに仕事への姿勢を測る「情意評価」を加えた3分類がよく使われます。
3分類の違いは次のとおりです。
| 分類 | 測るもの | 評価期間の性質 | 主な項目例 |
|---|---|---|---|
| 能力評価 | 職務遂行で発揮された能力 | 中長期で蓄積される | 企画力・判断力・指導力・専門知識 |
| 業績評価 | 一定期間に挙げた成果・目標達成 | 評価期間内で完結 | 目標達成度・課題達成度・売上貢献 |
| 情意評価 | 仕事への姿勢・態度 | 日常の行動に表れる | 規律性・責任性・協調性・積極性 |
※1 出典:人事院「人事評価と評価結果の活用」(2026年7月20日閲覧)
3分類にすると「できる人」と「出せる人」を分けて捉えられる
3分類のメリットは、「能力はあるが成果が出ていない人」と「成果は出たが姿勢に問題がある人」を別々の軸で評価できる点にあります。1つの軸だけで評価すると、成果偏重や態度偏重に傾きやすくなります。
両者を分けて捉えられると、評価後にとる対応も変わります。能力評価だけが低いなら教育や配置の問題として、情意評価だけが低いなら期待役割の伝わり方の問題として扱えるためです。総合点だけを見ていると、この切り分けができません。
能力評価を行動で測るならコンピテンシーを組み込む
能力評価をより行動レベルで精密化したい場合は、コンピテンシーを着眼点に組み込む方法もあります。コンピテンシーとは、高い成果を上げる社員に共通してみられる行動特性です。
具艇的には「企画力がある」という抽象的な能力を、「課題の背景を関係者に確認したうえで、実行可能な代替案を2つ以上示す」といった行動の記述に置き換えましょう。自社で成果を出している社員の行動を数人分書き出し、共通するものを拾うと、自社版の着眼点が作れます。
なお業績評価を目標管理(MBO)の枠組みで運用する企業も増えています。目標で業績を測る設計は「人事評価×MBO(目標管理制度)とは?組み込み方を実務解説」で解説しています。
人事評価の項目サンプル一覧|3分類別
3分類ごとに、実務でよく使う項目サンプルを一覧にしました。自社の項目を作るときは、この中から取捨選択すると早く進みます。
項目数は、1分類あたり3〜5個を目安にするとよいでしょう。多すぎると評価者の負担が増え、形骸化を招きやすくなります。
| 分類 | 項目名 | 定義(評価の着眼点) |
|---|---|---|
| 能力評価 | 企画・立案力 | 課題を発見し、実行可能な計画に落とし込めるか |
| 能力評価 | 判断・決断力 | 限られた情報のなかで適切に意思決定できるか |
| 能力評価 | 専門知識・技術 | 職務に必要な知識・スキルを保有し活用できるか |
| 能力評価 | 折衝・交渉力 | 社内外の関係者と合意形成を進められるか |
| 能力評価 | 指導・育成力 | 後輩や部下の成長を支援できるか |
| 業績評価 | 業務目標の達成度 | 期初に設定した数値・成果目標を達成したか |
| 業績評価 | 課題目標の達成度 | 改善・挑戦テーマに取り組み成果を出したか |
| 業績評価 | 業務の質・正確性 | 成果物の品質やミスの少なさは十分か |
| 情意評価 | 規律性 | ルール・期限・報連相を守れているか |
| 情意評価 | 責任性 | 担当業務を最後までやり遂げる姿勢があるか |
| 情意評価 | 協調性 | チームの目標達成に協力的に動けるか |
| 情意評価 | 積極性 | 自ら課題を見つけ、改善に動けるか |
業績評価の成否は、項目の良し悪しに加えて「目標の書き方」にも大きく左右されます。NG例を含む目標文の作り方は「人事考課の目標設定の例文|書き方の型とNG例を職種別に解説」で解説しています。
等級別の評価項目サンプル|求める役割で変える
評価項目は全社員で共通にせず、等級(グレード)ごとに「求める役割」を変えましょう。同じ「協調性」でも、新人と管理職では期待する水準が異なるためです。
等級が上がるほど業績と能力のウェイトを高める
設計の勘どころは、等級が上がるほど業績評価と能力評価(とくにマネジメント能力)のウェイトを高め、情意評価の比重を下げる点にあります。下表は4等級モデルの設計例です。
| 等級 | 役割イメージ | 重視する項目 | ウェイトの目安(能力/業績/情意) |
|---|---|---|---|
| 1等級(新人) | 指示を受けて確実に実行 | 規律性・正確性・基礎知識 | 40/20/40 |
| 2等級(一般) | 自律的に担当業務を遂行 | 専門知識・業務目標達成・責任性 | 40/30/30 |
| 3等級(主任・リーダー) | 後輩指導・小集団のまとめ役 | 指導力・課題達成・折衝力 | 35/40/25 |
| 4等級(管理職) | 組織目標の達成・人材育成 | マネジメント・組織業績・判断力 | 30/50/20 |
ウェイトはあくまで目安です。自社の経営方針に合わせて調整してください。たとえば、経営方針が「挑戦重視」なら業績の比重を、「育成重視」なら能力の比重を高めましょう。
役割を定義してから基準に照らす
国家公務員の人事評価でも、業績評価は役割を明確化したうえで挙げた業績を見る仕組みです。能力評価・業績評価のいずれも、職務行動や業務の達成状況を評価基準に照らした絶対評価でおこなわれます※2。役割を明確に定義し、あらかじめ定めた基準に照らして評価する考え方は、民間の等級別設計と共通しています。
順序が逆になると、設計は行き詰まります。項目を先に並べてから等級に割り振ろうとすると、「この項目は3等級なら何点か」を判断する根拠がどこにもないためです。役割の定義を先に置いてください。
評価が低い等級の社員は、結果の伝え方を誤ると離職につながりやすくなります。低評価のフィードバック運用は「人事評価が低いと社員は辞める|やる気をなくす原因と運用改善」で解説しています。
※2 出典:人事院「人事評価と評価結果の活用」(2026年7月20日閲覧)
職種別の評価項目サンプル|営業・事務・技術・製造
職種別の項目では、情意評価を全社共通で残し、能力評価と業績評価を職種特性に合わせて差し替えましょう。営業職に「正確性」だけを求めても成果は測れず、事務職に「売上」を求めても職務と噛み合わないためです。
代表4職種の設計例
代表的な4つの職種の設計例は以下のとおりです。
| 職種 | 重視する能力項目 | 重視する業績項目 | 設計のポイント |
|---|---|---|---|
| 営業職 | 折衝・交渉力、提案力 | 売上・受注の目標達成度 | 数値目標のウェイトを高めに設定 |
| 事務職 | 正確性、業務改善力 | 処理件数、納期遵守、ミス削減 | 成果が数値化しにくいため行動評価を併用 |
| 技術職・エンジニア | 専門技術、課題解決力 | 開発・品質目標の達成度 | 成果物の品質と納期の両面で測る |
| 製造職 | 作業精度、安全意識 | 生産目標、不良率、改善提案数 | 安全・品質を情意ではなく業績項目で明示 |
数値化しにくい職種は行動評価を併用する
事務職や管理部門のように成果が数値で出にくい職種では、「何をどうしたか」という行動を評価する項目(行動評価)を併用すると、評価者による甘辛の差を抑えやすくなります。
行動評価の項目は、日常業務のなかで観察できる粒度まで下ろしましょう。「業務改善力」であれば、「担当業務の手順を見直し、月1件以上の改善を提案する」といった書き方になります。件数を入れておくと、評価者が異なっても判断の幅が狭まります。
職種別の項目をさらに具体化したい場合は、「【事務職】人事評価シートの例文|段階別・項目別のコピペ集」や「【営業職】人事考課の例文|評価段階・項目別コピペ集」が参考になります。
公的な評価基準を項目設計に使う方法
評価項目をゼロから言語化するのが難しい場合、公的に整理された評価基準を「下敷き」にすると設計が速くなります。代表例が、無料公開されている厚生労働省の「職業能力評価基準」です。
職業能力評価基準とは
職業能力評価基準は、「仕事をこなすために必要な『知識』と『技術・技能』に加えて、『成果につながる職務行動例(職務遂行能力)』を、業種別、職種・職務別に整理したもの」と定義されています。同基準は56業種で策定され、厚生労働省サイトで公開されています※3。
厚生労働省は、事務系9職種と16業種を対象に、評価の着眼点をまとめた「職業能力評価シート」とキャリアマップも整備しています※4。自社の業種に近いシートがあれば、業種別の項目設計の下敷きとしてあわせて参考にできます。
自社の項目に落とし込む4手順
活用の手順は次のとおりです。
- 自社の業種に近い「策定業種」を一覧から選ぶ
- 対象の職種・職務の「能力ユニット」と「職務行動例」を確認する
- 自社の言葉に翻訳し、評価項目と着眼点に転記する
- 等級レベルの区分を、自社の等級に対応づける
3の「自社の言葉への翻訳」がこの手順の中心です。公的基準の文言は業種横断で通用するよう抽象度が高く、そのまま転記すると自社の現場で何を見ればよいかが伝わりません。自社で実際に使っている業務名・帳票名に置き換えてください。
そのまま使わず項目数を絞る
公的基準は、自社の規模・実態に合わせて項目数を絞り込みましょう。中小企業でいきなり数十項目を導入すると、評価のたびに記入と確認の工数が膨らみ、運用が続かなくなりがちです。
絞り込む基準は、「その項目で差がついたとき、処遇や育成の判断を変えるか」です。判断が変わらない項目は、測っても使い道がありません。
※3 出典:厚生労働省「職業能力評価基準」(2026年7月20日閲覧)
※4 出典:厚生労働省「職業能力評価シートについて」(2026年7月20日閲覧)
人事評価の項目の作り方5ステップ
評価項目は、思いつきで並べるのではなく、経営方針から逆算して作りましょう。順序を踏むことで、項目が「測りたいこと」とずれにくくなります。
設計の5ステップ
設計の手順は次の5ステップです。
- 経営理念・目標の再確認:会社がどんな行動・成果を評価したいかを言語化する
- 等級・職種ごとの役割定義:等級と職種の組み合わせで「期待する役割」を決める
- 項目案の作成(3分類で振り分け):能力・業績・情意に項目を割り当て、各3〜5項目に絞る
- 着眼点と評価基準の明文化:各項目に「何を見るか」「どの状態がS/A/Bか」を定義する
- 社員への説明と合意形成:評価される側に項目の意図を共有し、納得感を高める
1から3までは人事部門だけで進められます。一方、4と5は評価者と被評価者を巻き込む工程になるため、スケジュールを先に押さえておきましょう。
省かれやすいのは「基準の明文化」と「合意形成」
5ステップでとくに省かれやすい工程が、4の「評価基準の明文化」と5の「合意形成」です。基準があいまいなままだと、評価者ごとに解釈がぶれます。項目の意図を共有しないまま運用を始めると、現場には「勝手に決められた」という受け止めが残ります。
たとえば「業務目標の達成度」という項目なら、S=目標を大きく上回って達成、A=目標どおり達成、B=目標をやや下回ったが業務に支障はない、のように状態を言葉で書き分けてください。基準を文章にしておくと、評価者が変わっても解釈のブレを抑えられます。
業績評価の項目を目標管理シートで運用する場合は、目標設定のフォーマットを統一すると評価がぶれにくくなります。目標管理(MBO)で業績項目を運用するなら、「目標管理シートの書き方|項目構成と職種別の記入例を紹介」が使えます。
よくある失敗と改善策|項目設計でつまずく4パターン
評価項目の失敗は、運用が始まってから「現場が回らない」「不満が出る」という症状で表面化します。設計段階で次の4パターンを避けてください。
| 失敗パターン | 起きること | 改善策 |
|---|---|---|
| 項目が多すぎる | 評価が負担になり形骸化する | 1分類3〜5個、全体15個以内に絞る |
| 抽象的すぎる項目 | 評価者で解釈がぶれ甘辛が出る | 各項目に着眼点と段階基準を明文化する |
| 全社員で項目が共通 | 等級・職種の期待とずれる | 等級別・職種別に項目とウェイトを変える |
| 情意評価に偏る | 成果が反映されず不公平感が出る | 等級が上がるほど業績のウェイトを高める |
4パターンはいずれも、項目を作った時点では問題が見えません。設計を終えたら、自社の評価者2〜3人に同じ社員を試しに評価してもらうと、解釈のぶれが運用前に確認できます。
評価者による甘辛の差が大きいときは、複数の視点で評価する360度評価の併用も検討しましょう。手順は「360度評価とは|メリット・デメリットと失敗しない導入手順を解説」にまとめています。すでに制度はあるのに運用が回らない場合は、項目以外の要因を「評価制度の運用が回らない原因と改善策|定着の5ステップ」で確認してください。
人事評価の項目に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、評価項目の設計についてのよくある質問に回答します。
A. 1分類(能力・業績・情意)あたり3〜5個、全体で15個以内が目安です。項目が多いほど精緻に見えますが、評価者の負担が増えて形骸化を招きます。まず重要な項目に絞り、運用しながら見直しましょう。
A. 先に等級別で「役割と期待水準」の骨格を作り、その上で職種別に能力・業績項目を差し替える順序がおすすめです。情意評価は全社共通で残すと、設計と運用の両方がシンプルになります。
A. 事務職や管理部門など数値化が難しい職種は、「何をどうおこなったか」という行動を測る行動評価を併用します。具体的な行動例を着眼点に書き込むと、評価者による判断のばらつきを抑えられます。
A. ありません。評価項目は自社の経営方針・等級・職種に合わせて設計するものです。厚生労働省の職業能力評価基準などの公的基準は下敷きとして有用です。ただし、そのまま転用せず自社の言葉と規模に合わせて調整してください。
A. 年1回を目安に、事業や組織の変化に合わせて見直しましょう。評価のたびに大幅に変えると、前期との比較ができず運用が安定しません。大枠は維持したうえで、ずれが大きい項目だけを微修正してください。
まとめ:3分類を土台に、等級と職種へ落とし込む
会社の個性は、評価項目そのものには表れません。同じ「主体性」という項目でも、どんな行動を書いて「できている」とみなすかは会社ごとに違います。項目案ができたら、そのうち1つを選び、自社で実際にあった行動を2つ書き添えるところまで進めてみましょう。



