タレントマネジメントの事例5社|成果につながった取り組み

この記事でわかること

  • サイバーエージェント・カルビー・カゴメ・ロート製薬・サイボウズ5社の取り組みと成果を公式発表から比較する
  • 成果が出た企業に共通する4つの型と、企業規模ではなく取り組みの型が成果を分けるという考え方
  • 30〜300名規模の企業が自社の体制で事例を再現するための3ステップと、着手の順番

5社の事例に共通する成果の「型」を、30〜300名規模で再現する方法を示します。

「他社はタレントマネジメントで何をやっているのか」 「自社の規模でも再現できるのか」

タレントマネジメントのイメージが湧かず、他社の事例を求める担当者の方は多いのではないでしょうか。

タレントマネジメントで成果を出している企業に共通するのは、「人材情報を一元化し、本人の意思を吸い上げ、配置・育成・抜擢の意思決定につなげる」ループを回し続けていることです。やり方は会社ごとに違っても、この型は変わりません。

この記事では、5社のタレントマネジメント事例を取り上げて紹介します。これからタレントマネジメントに力を入れていきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

事例の比較一覧

ここではまず、各社の取り組みや特徴を一覧で紹介します。

企業主な目的中核となる取り組み特徴
サイバーエージェント適材適所・才能開花月次サーベイ「GEPPO」+社内ヘッドハンティング「キャリアエージェント」+公募「キャリチャレ」本人の意思を毎月拾い、手挙げで動かす
カルビー全員活躍・コア人材育成「全員活躍指数」による可視化+コア人財の計画的な採用・育成活躍を独自指標で数値化
カゴメキャリア自律・適材適所自己申告制度・社内公募+次世代経営人材の計画的育成自律と抜擢を制度でつなぐ
ロート製薬個の尊重・キャリア開発「マイビジョンシート」+複業・社内ダブルジョブ越境経験で人材の幅を広げる
サイボウズ多様な働き方と活躍の両立「働き方マッチング」+スキル可視化「Myキャリ」一人ひとりが条件を選べる

5社の目的は、大きく「適材適所」「キャリア自律」「多様な働き方」の3方向に分かれます。自社の課題(配置のミスマッチ・キャリアに関する不満・柔軟な働き方への対応など)に近い事例から読み進めると、自社への取り入れがしやすくなるでしょう。

成果が出た事例に共通する4つの型

5社の事例を見ると、成果につながった取り組みには4つの共通点があることが分かります。

共通点中身規模を問わず成立する理由
①人材情報の一元化経歴・スキル・評価・志向を1か所に集約し、検索・可視化できる状態にする「誰が何を持っているか」が分からなければ配置も育成も勘になる
②本人の意思の吸い上げサーベイ・自己申告・キャリアシートで、志向や不満を定点で拾う会社視点だけの配置はミスマッチを生む。本人起点が定着を高める
③手挙げ・公募の仕組み異動や挑戦を「本人が宣言できる」導線を用意する適材適所は指名だけでは限界がある。手挙げが埋もれた人材を動かす
④経営と連動した育成・抜擢次世代リーダーやコア人材を、配置の経験を通じて計画的に育てる採用難の時代は、社内からの発掘・育成が現実解になりやすい

押さえておきたいのは、これらを一度に全部狙わない姿勢です。各社も自社の課題が深い領域から着手しているため、その視点で次の事例を読んでください。

5社のタレントマネジメント事例

ここからは、先ほど表で紹介した5社のタレントマネジメント事例を紹介します。自社で取り入れる際のコツも紹介するので、参考にしてみてください。

事例1:サイバーエージェント|毎月の声を適材適所に変える

サイバーエージェントは、人材の意思と事業ニーズをマッチングし、適材適所による事業成長と社員の才能開花の両立を掲げています。中核は、②本人の意思の吸い上げと③手挙げ・公募の仕組みにあたる2つの制度です。

ひとつ目の制度は、社内ヘッドハンティング組織「キャリアエージェント」です。月次サーベイ「GEPPO」と合わせて、年約1,200人(専任4人が担当)規模の面談を通じ、社員のキャリア関心や中長期の志向を引き出しています。同時に、社内求人サイトや動画、公募制度で社内のポジションを可視化し、人材と仕事をつないでいます※1。

もうひとつの制度が、社内異動公募制度「キャリチャレ」です。現部署に1年以上在籍した社員が、挑戦したい部門やグループ会社へ自ら手を挙げて応募できます。社内求人サイト「キャリバー」では2021年12月時点で約500件のポジションを確認でき、応募後は本人の宣言が役員会に届いて決議される流れです。2022年度は、応募した社員の約7割が異動しています※2。

CHO(最高人事責任者)の曽山哲人氏は、2022年公表のエンゲージメント調査で従業員の87%が「働きがいがある」と回答した要因として、こうした人材施策を挙げています※3。

※1 出典:サイバーエージェント「適材適所を叶える仕組み」(2026年7月3日閲覧)
※2 出典:サイバーエージェント CyberAgent Way「社員の挑戦を応援する 社内異動制度『キャリチャレ』とは」(2026年6月25日閲覧)
※3 出典:サイバーエージェント CyberAgent Way「87%の社員が『働きがいがある』と答える環境を実現。CHO曽山が語るエンゲージメントを高める人事施策」(2022年5月26日公開・2026年7月3日閲覧)

中小企業で取り入れる場合のコツ

専用の社内求人サイトや月次サーベイツールがなくても、本質は移植できます。移植するのは、本人の意思を定期的に拾い、手挙げで動ける場をつくるという考え方です。

  • 30名規模の企業:四半期に一度の1on1で「次に挑戦したい仕事」を必ず聞き、記録に残すだけでも起点になる
  • 100〜300名の企業:簡易な社内公募(部署横断の欠員を全社に告知し手挙げを募る)から始めると、指名では動かなかった人材が動く

サーベイで意思を拾う具体策は「タレントマネジメントの進め方5ステップと管理項目を解説」で手順化しています。

事例2:カルビー|「全員活躍」を独自指標で可視化する

カルビーは2025年9月26日、初の「Human Capital Report」を公開しました※4。掲げているのは、多様な人財が強みを活かし合う「全員活躍」という考え方です。この取り組みは、①人材情報の一元化(可視化)と④経営と連動した育成の両方に関係しています。

特徴は、独自の「全員活躍指数(人的資本インデックス)」を策定した点です。全員活躍指数は、国内コア事業を支える「α人財」と、海外や新規事業を切り開く「β人財」の活躍を数値化し、両者の相互信頼による相乗効果を評価する指標です※4。

加えて、カルビーは将来の価値創造を牽引する「コア人財」(経営視点を持つリーダー・DX・グローバル)の計画的な採用・育成も打ち出しています。次世代リーダーについては、人財の発掘と育成プランの策定を進めています。

タレントマネジメントシステムは、記入実施後に役職者と対話するキャリア自律支援の取り組みに活用されているようです※5。

※4 出典:カルビー「カルビー、初の「Human Capital Report」を公開」(2026年6月25日閲覧)
※5 出典:カルビー「Human Capital Report 2025」(2026年7月3日閲覧)

中小企業で取り入れる場合のコツ

独自指数の開発そのものを真似る必要はありません。学ぶべきは「活躍を主観で語らず、自社なりの物差しで見える化する」姿勢です。

  • 「自社にとっての活躍とは何か」を2〜3要素で言語化する(例:強みの発揮度、挑戦の量、周囲への貢献)
  • それをサーベイや評価の数項目に落とし、年1回でも定点観測すると、議論が「印象論」から「データ」に変わる

人材を区分して可視化する手法としては、9boxによる人材ポートフォリオが適しています。詳細は「9boxとは|人材ポートフォリオの作り方と9象限ごとの人材施策を解説」をご覧ください。

事例3:カゴメ|キャリア自律と計画的な抜擢をつなぐ

カゴメは、個人の多様な強みを伸ばしてチームで活かし合うことでイノベーションを起こし、社会課題の解決に資する人材集団をつくることを人材育成のビジョンに掲げています。

それらを支えるのは、次の制度です。※6。

  • 自己申告制度:全従業員を対象に年1回実施し、中長期のキャリアプランや能力開発の取り組みを上司・部下間で共有する
  • キャリア異動希望制度・社内公募制度:特定ポジションについて異動候補者を公募する
  • コース転換制度:働き方や役割を選択できる
  • キャリア研修・カウンセリング:30代・40代・50代の節目で自律的なキャリア形成を支援する

次世代経営人材の育成にも、④経営と連動した育成として踏み込んでいます。ガバナンス資料によると、次世代幹部候補の選抜・育成プロセスとしてサクセッションプランも整備し、代表取締役社長・社内取締役・CHOで構成する人材開発委員会が候補者の選定と配置・Off-JTを含む育成プランの作成を担っているそうです※7。

※6 出典:カゴメ「従業員の能力・モチベーションの向上」(2026年6月25日閲覧)
※7 出典:カゴメ「カゴメのマネジメント」(2026年7月3日閲覧)

中小企業で取り入れる場合のコツ

ポイントは「自律(本人が希望を出す)」と「抜擢(会社が経験を計画的に与える)」を別物にしないことです。

  • 30〜100名規模の企業:年1回の自己申告(キャリアプランと異動希望の記入)を1枚の様式で制度化するだけで、埋もれた希望が見える
  • 次世代リーダー候補には、研修より先に「未経験部署の小さな責任」を意図的に渡すと、座学では育たない力が伸びる

抜擢の前提となる「誰を次の管理職候補にするか」の整理には、スキルの棚卸しが効果を発揮します。作り方は「スキルマップの作り方|職種別の記入例とレベル定義を解説」で解説していますのでご確認ください。

事例4:ロート製薬|越境経験で人材の幅を広げる

ロート製薬は「個を尊重した人財マネジメント」を掲げ、社員を育成しています。中核は、②本人の意思の吸い上げにあたる「マイビジョンシート」です。年1回、社員が中長期のキャリアビジョンと挑戦したい業務を記入し、経営幹部がそのすべてに目を通しています※8。

さらに、④経営と連動した育成につながる、社員の経験の幅を広げる独自施策も展開しているようです。

  • 社外チャレンジワーク(複業):ロート以外での就業経験を通じて新たな可能性を引き出す
  • 社内ダブルジョブ(兼務):就業時間内に部門を超えた他部署勤務を可能にし、スキルアップと働きがいの向上を狙う
  • ジョブローテーション:他部署経験を通じた自己成長を促す

社内起業を支援する「明日ニハ」プロジェクトも展開しており、2023年6月時点で7社が設立されています※8。

※8 出典:ロート製薬「働く環境」(2026年6月25日閲覧)

中小企業で取り入れる場合のコツ

複業解禁や社内起業は規模が小さいほど制度設計しやすい領域です。学ぶべきは「特定の部署に固定しない経験設計」です。

  • 兼務(社内ダブルジョブ)は人手が限られる中小企業でこそ効果があり、週0.5日でも他部署に関わるだけで視野とスキルが広がる
  • 「経営幹部が全員のキャリア希望に目を通す」運用は100名前後までなら十分に実行でき、トップが個の志向を知っていること自体が定着と挑戦の土壌になる

事例5:サイボウズ|働き方を選べる土台の上に可視化を載せる

サイボウズは「チームの生産性」と「メンバーの幸福」の両立を掲げ、一人ひとりが働き方を選べる制度を整えています。中核は、②本人の意思の吸い上げにあたる「働き方マッチング」です。社員が希望する勤務時間・場所を伝え、上司が役割・条件を提案し、合意して決定する仕組みで、各社員の労働条件は全社に公開される仕組みを採用しています※9。

このほか、契約条件から一時的に外れて働ける「ウルトラワーク」、原則認められる複業(新卒の研修期間中は除く)、部門を越えて一時的に兼務・体験できる「大人の体験入部」なども運用しています。※9。

※9 出典:サイボウズ「社内制度」(2026年6月25日閲覧)

中小企業で取り入れる場合のコツ

サイボウズの事例からは、「人材の可視化は、働き方の柔軟性とセットで効果を発揮する」ことが読み取れます。

  • 労働条件や働き方が硬直的なままスキルだけ可視化しても、活かす配置先がなければ宝の持ち腐れになる
  • 30〜300名の企業では「働き方の選択肢を少し広げる」ことと「全社員のスキル・志向を一覧化する」ことを並行で進めると、可視化が配置の実行に結びつく

スキルの一覧化は、専用システムがなくてもExcelから始められます。全社員分を1枚にまとめるだけで、配置の議論の土台になるでしょう。

事例から学ぶ:自社で再現する3ステップ

5社の取り組みのよい点を自社で再現するためには、以下のステップで進めましょう。

  1. 可視化する:全社員の経歴・スキル・志向を1か所に集約する(30〜100名の企業ならExcelやスプレッドシートでも始められる)
  2. 意思を拾う:年1回の自己申告か、月次・四半期のサーベイで本人のキャリア志向と不満を定点で把握する
  3. 動かす:手挙げ(社内公募)と計画的な配置・抜擢で、可視化したデータを実際の人事に反映する

各社に共通するのは、いきなりシステム導入から入らない姿勢です。目的(適材適所・全員活躍・キャリア自律など)を先に定め、仕組みはそのあとで整えています。

自社の目的が定まったうえでシステムを検討する段階に来たら、機能と選び方を「タレントマネジメントシステムとは|機能と選び方を解説」をご確認ください。

タレントマネジメントの事例に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、タレントマネジメントの事例についてのよくある質問に回答します。

A. あります。紹介した5社は、(1)人材情報の一元化、(2)本人の意思の吸い上げ、(3)手挙げ・公募の仕組み、(4)経営と連動した育成・抜擢、のいずれか(多くは複数)を満たしていました。高機能なシステムの有無よりも、この型を回し続けているかが成果を分けます。

A. 再現できます。専用システムがなくても、年1回の自己申告、四半期の1on1での志向ヒアリング、Excelでのスキル一覧化、簡易な社内公募から始められます。規模が小さいほど、経営層が一人ひとりの志向を把握しやすいでしょう。

A. 必須ではありません。事例の各社も、目的(適材適所・キャリア自律など)が先にあり、仕組みやシステムは後から整えています。まずはExcelやスプレッドシートで可視化を始め、人数やデータが増えて運用が回らなくなった段階でシステムを導入すると無駄がありません。

A. 「可視化→意思を拾う→動かす」の順がおすすめです。最初に全社員の経歴・スキル・志向を1か所に集約し、次に自己申告やサーベイで本人の希望を把握し、最後に社内公募や計画的な配置で実際の人事に反映しましょう。スキルの可視化は、Excelのスキルマップから着手すると取り組みやすいでしょう。

A. 拾った意思を「放置しない」ことです。自己申告やサーベイを取っても、配置や対話に反映されなければ「答えても変わらない」という不信を招きます。まず1〜2施策に絞って小さく回し、本人の希望が実際の異動・挑戦につながる成功体験を積むことが、定着への近道です。

まとめ:規模ではなく「型」が成果を分ける

タレントマネジメントの成果は、企業規模やシステムの高機能さでは決まりません。5社に共通したのは、人材情報の一元化、本人の意思の吸い上げ、手挙げ・公募、経営と連動した育成という4つの型を回し続けている点でした。この型は、中小企業でも再現できます。自社の「活躍とは何か」を言語化し、全社員のスキルと志向を1枚にまとめるなどから始めてみましょう。


この記事をシェア

週1回配信無料メルマガ

他社の運用失敗事例と解決策が、毎週届く

人事担当者の課題を解決する情報を多数掲載。失敗事例・最新調査・SaaS比較情報を厳選してお届けします。

無料で登録する

この記事の課題を解決できるサービスを比較する

タレントマネジメントに役立つSaaSを中立的に比較。気になるサービスの資料を一括で請求できます。

タレントマネジメントシステムの資料を請求する

※資料請求の完了と同時に、BOXIL会員への登録が行われます。

関連する記事

注目されている課題

毎週メールマガジン配信中

今すぐ会員登録(無料)