離職率の計算方法は「離職者数 ÷ 起算日の在籍者数 × 100」が基本です。ただし分母をいつ時点でとるかを決めないと、社内でも数字がばらつきます。自社の離職率が高いか低いかを判断するには、正しい計算式と比較対象となる平均値の両方が必要です。
本記事では、離職率の計算式と具体的な計算例、厚生労働省の最新統計に基づく全体・男女別・業界別の平均値を、その日のうちに自社の数値と見比べられる形で解説します。
1. 離職率とは?意味と「定着率」との関係
離職率とは、起算日に在籍していた従業員のうち、一定期間内に離職した人の割合を百分率で表した指標です。組織の人材が定着しているか、流出しているかを測る代表的なものさしとして使われます。
混同しやすいのが「定着率」です。両者は表裏の関係にあり、次の式で割り出せます。
- 定着率(%)= 100 − 離職率(%)
- 例:離職率が15%なら、定着率は85%
離職率に法律上の唯一の計算式はありません。そのため「いつ時点の在籍者を分母にするか」「対象期間をどうとるか」を決めないと、社内でも数字がばらつきます。まずは計算方法を正しく押さえ、社内で使う定義をそろえましょう。
離職率を見るときの3つの前提
離職率の数字を読み違えないために、最初に次の3点を確認しましょう。
| 確認点 | 内容 | 注意 |
|---|---|---|
| 起算日(分母の時点) | いつの在籍者を母数にするか | 期初か年初(1月1日)かで分母が変わる |
| 対象期間 | 1年間か、四半期か、3年間か | 期間が長いほど離職率は高く出やすい |
| 対象者 | 全社員か、正社員のみか、新卒のみか | 範囲を変えると数字が大きく動く |
この前提をそろえずに他社や統計と比べると、誤った結論につながります。比較対象を選ぶときは、厚生労働省の雇用動向調査の定義に合わせると整合します。
2. 離職率の計算方法(計算式と具体例)
離職率は、計算式・具体的な数値・エクセルでの集計手順の3点をそろえれば、自社の数字を出せます。簡単な手順で出せるので、ここで計算方法をマスターしましょう。
基本の計算式
離職率は、次の式で求めます。
離職率(%)= 一定期間の離職者数 ÷ 起算日の在籍者数 × 100
厚生労働省の「雇用動向調査」では、起算日を年初(1月1日)に固定し、次のように定義しています。
離職率(%)= 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100※1
つまり「その年の初めにいた人を分母に、1年間で辞めた人を分子に置く」という考え方です。自社で計算するときも、この公式を基準にすると統計と比較しやすくなります。
※1 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)
計算の3ステップ
計算は以下の手順で進めましょう。
- 起算日(1月1日や期初)を決め、その時点の在籍者数を確定する(分母)
- 同じ起算日から1年間に離職した人数を数える(分子)
- 分子 ÷ 分母 × 100 で離職率を算出する
計算例:従業員100名の会社
ここでは、1月1日時点の在籍者が100名、その年の1年間で8名が退職したケースを例として紹介します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 起算日(1月1日)の在籍者数 | 100名 |
| 1年間の離職者数 | 8名 |
| 計算 | 8 ÷ 100 × 100 |
| 離職率 | 8.0% |
この会社の離職率は8.0%、裏返した定着率は92.0%です。
計算例:分母を間違えるとどうなるか
注意したいのは、分母に「期末の在籍者数」や「期中の平均在籍者数」を使うと、同じ会社でも数字が変わる点です。期初100名・期末120名(採用が活発な会社)で離職者8名なら、次のようにずれます。
- 起算日基準:8 ÷ 100 × 100 = 8.0%
- 期末基準:8 ÷ 120 × 100 = 約6.7%
同じ「8名が辞めた」事実でも、分母の取り方で1ポイント以上ずれます。社内で定点観測する際は、毎回同じ起算日・同じ範囲で計算しましょう。
エクセルでの算出手順
手元のExcelで素早く計算したい場合は、次の3ステップで進めましょう。
- 起算日時点の在籍者一覧を用意し、COUNTA関数で人数をカウントする(分母のセル)
- 対象期間の離職者一覧を用意し、COUNTIF関数で期間を条件に人数をカウントする(分子のセル)
- 「離職者数のセル ÷ 在籍者数のセル × 100」の数式を組む。分母・分子のセルを固定参照にしておくと、翌期以降も数式を使い回せる
部署別・拠点別の離職率も見たい場合は、COUNTIFS関数で部署列や拠点列を条件に加えると、同じシートのまま内訳を分解できます。
対象者の扱い:中途・定年・期中入社
分母や分子に「誰を含めるか」も、離職率の解釈を左右します。例は以下のとおりです。
- 起算日より後に入社した中途社員は、その期の分母(起算日時点の在籍者数)に含めない
- 起算日より後に入社した人が期中に離職した場合も、起算日基準の離職率に含めない
- 定年退職や契約期間の満了による退職も、雇用動向調査でいう離職には含まれる
離職理由別に内訳を分けて集計しておくと、平均値との比較だけでなく、社内の原因分析にもそのまま使えます。
入社年度をそろえて見る「コホート離職率」
中途採用が多い会社では、全社の離職率だけでは「いつ辞めているか」が見えません。そこで有効なのが、入社年度ごとに同じ集団(コホート)を追う見方です。
- 例:2023年4月入社の新卒10名のうち、3年以内に4名が退職 → 3年以内離職率40%
厚生労働省の新卒離職率も、このコホートの考え方で集計されています。採用の歩留まりや早期離職を把握したいときは、全社平均と分けて管理する方が課題がわかりやすくなります。
3. 離職率の平均は何%?厚労省データで見る全体・男女別
「計算はできたが、自社の数字が高いのか低いのか分からない」という方は、離職率の全国平均を確認してみましょう。
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、令和7年(2025年)1年間の離職率は全体で13.7%でした※2。同じ期間の入職率は14.7%で、入職が離職を上回る「入職超過」が続いています。
| 区分(令和7年) | 離職率 | 前年差 |
|---|---|---|
| 全体 | 13.7% | ▲0.5ポイント |
| 男性 | 12.5% | ▲0.1ポイント |
| 女性 | 15.1% | ▲0.9ポイント |
| 一般労働者 | 11.4% | ▲0.1ポイント |
| パートタイム労働者 | 19.9% | ▲1.5ポイント |
ここで注意したいのは、全体の13.7%にパートタイム労働者(19.9%)が含まれている点です。正社員中心の会社が自社の数字と比べるなら、パートを除いた「一般労働者の11.4%」が現実的な目安になります。雇用形態を区別せず比較すると、自社を過大評価・過小評価しかねません。なお、雇用動向調査の対象は常用労働者5人以上の事業所の常用労働者で、役員などは含まれません。
※2 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)。前年差は令和6年時点の公表値との差
離職率は前年から低下した
離職率は令和6年では全体14.2%でしたが、令和7年は13.7%へ下がりました。直近10年は13.7〜15.6%で推移しています。令和7年の13.7%は、この10年で最も低い水準です。
| 年 | 全体の離職率 |
|---|---|
| 令和5年(2023年) | 15.4% |
| 令和6年(2024年) | 14.2% |
| 令和7年(2025年) | 13.7% |
なお、令和7年1年間の離職者数は全国で約705万人(7,052.6千人)にのぼります※3。離職は一部の企業だけの問題ではなく、労働市場全体で起きている動きだといえます。
※3 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)
4. 業界別の離職率の平均
離職率は業界によって大きく異なります。自社を評価するなら、同じ業界の水準と比べましょう。
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、一般労働者の離職率が高い産業は「宿泊業,飲食サービス業」が21.5%、「サービス業(他に分類されないもの)」が20.3%の順でした※4。いずれも全産業の一般労働者平均(11.4%)を大きく上回ります。
| 産業(一般労働者・令和7年) | 離職率 |
|---|---|
| 宿泊業,飲食サービス業 | 21.5%(産業別で最も高い水準) |
| サービス業(他に分類されないもの) | 20.3% |
| 全産業(一般労働者)平均 | 11.4% |
接客やシフト勤務の比率が高い産業は、離職率が高く出やすい傾向があります。専門性が高く長期雇用が前提の産業は、逆に低めです。「離職率が平均より高い=悪い会社」と短絡せず、業界特性を踏まえて読みましょう。
業界ごとの詳しい数値や、自社の業界の離職率が平均より高い場合の見方は、次の記事でまとめています。
※4 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)
5. 「3年で3割」という通説は本当か|コホートで見る早期離職
「新卒は3年で3割辞める」という通説は、入社年度ごとに同じ集団を追うコホートの考え方に基づいています。厚生労働省が公表する新規学卒就職者の離職状況で、最新の数値を確認しましょう。
最新の離職率
厚生労働省が令和7年10月24日に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は次のとおりです※5。
| 最終学歴(令和4年3月卒) | 就職後3年以内の離職率 | 前年(令和3年3月卒)差 |
|---|---|---|
| 新規中学卒 | 54.1% | +3.6ポイント |
| 新規高校卒 | 37.9% | ▲0.5ポイント |
| 新規短大等卒 | 44.5% | ▲0.1ポイント |
| 新規大学卒 | 33.8% | ▲1.1ポイント |
大学卒は33.8%で、「3年で約3割」という通説とおおむね一致します。大卒・高卒・短大卒は前年より低下した一方、中学卒は上昇しました。中学卒が最も高く、大学卒が最も低いなど、学歴によって水準は大きく異なります。
新卒の早期離職は、採用・育成にかけたコストを回収しきれないまま人材を失う点で、企業への影響がとくに大きいテーマです。
事業所規模別・業界別の差や推移など、新卒データの詳細は次の記事で扱っています。
早期離職が会社にもたらす損失の考え方は、こちらの記事でご確認ください。
※5 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」令和7年10月24日公表(2026年6月22日閲覧)
6. 自社の離職率を計算したら、次に見るべきこと
離職率を出したあとに大切なのは、「数字の高低」ではなく「なぜその数字なのか」を読み解くことです。次の観点で深掘りすると、具体的な改善策につながります。
- いつ辞めているか:入社1年以内か、3年目前後か、特定の階層か
- どこで辞めているか:部署・職種・拠点に偏りはないか
- 誰が辞めているか:評価の高い人材か、特定の属性か
離職率が平均より高い場合、その背景には待遇・人間関係・評価・成長機会など複数の要因が絡みます。原因のパターンと見極め方は、以下の記事で解説しています。
7. 離職率を自動で計算する(計算ツール)
ここまでの計算式を手元で素早く確かめたい方向けに、人数を入力するだけで離職率と定着率がわかる自動計算ツールを用意しました。起算日の在籍者数と離職者数を入れるだけで、業界平均との比較もその場で確認できます。
自社の数値が把握できたら、原因分析と防止施策へ進みましょう。すぐに着手できる施策の一覧は、以下の記事でまとめています。
よくある質問(FAQ)
ここでは、離職率の計算方法や平均値についてのよくある質問に回答します。
A. 法律で定められた唯一の式はありません。一般的な計算式は「離職者数 ÷ 起算日の在籍者数 × 100」です。厚生労働省の雇用動向調査は、起算日を年初(1月1日)に固定する方式を採用しています。統計と比較する場合は、この基準にそろえると整合します。
A. 定点観測では「起算日(期初・年初)の在籍者数」を使うのが基本です。期末や平均人数を使うと、採用が活発な会社では離職率が低めに出ます。重要なのは、毎回同じ起算日・同じ対象者で計算し、推移を同一条件で比べることです。
A. 厚生労働省「令和7年雇用動向調査」では、全体の離職率は13.7%です※6。ただしパートタイム労働者(19.9%)を含む数字のため、正社員中心の会社は一般労働者の11.4%を目安にすると実態に近づきます※6。
A. 新規大学卒(令和4年3月卒)の就職後3年以内の離職率は33.8%で、通説とおおむね一致します。新規高校卒は37.9%とさらに高く、学歴によって水準は異なります。
A. まず「いつ・どこで・誰が」辞めているかを分解しましょう。業界平均より離職率が高くても、業界特性による場合もあるため、同業・同条件と比べることが先決です。そのうえで原因を特定し、待遇や評価、オンボーディングなどの施策につなげましょう。
※6 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)
まとめ:正しく計算し、正しい平均と比べる
離職率は、計算方法と比較対象をそろえて初めて、自社の現在地を正しく示す指標になります。
- 計算式は「離職者数 ÷ 起算日の在籍者数 × 100」。分母の時点と対象範囲を毎回そろえる
- 全体平均(令和7年・13.7%)には非正規が含まれる。正社員中心なら一般労働者11.4%が目安
- 業界・雇用形態・新卒/全社で水準は大きく異なる。同じ条件で比べる
- 新卒3年以内の離職率は大卒33.8%。「3年3割」は最新データでも継続
離職率を正しく数えることは、原因の特定と定着施策に踏み出すための土台になります。数字をもとに、次は原因の特定へ進みましょう。




