早期離職とは|企業の損失と原因・防ぐ対策を解説

この記事でわかること

  • 大卒の3年以内離職率33.8%のうち12.1%が1年目で、早期離職は入社1年目に集中する
  • 採用費と育成投資を回収する前に人材を失うという、早期離職が企業にもたらす損失の内訳
  • 早期離職・短期離職が起きる原因と、コスト別・効果の出る順に並べた早期離職を防ぐ対策
  • RJPや受け入れの仕組み化など入社初期に効く対策と、対策で陥りやすい失敗パターン

入社1年目に集中する早期離職の損失と原因、入社初期に効く対策を解説します。

早期離職とは、入社からおおむね3年以内に会社を辞めることです。1年以内の離職は短期離職と呼ばれ、採用したばかりの人材を失う分、企業の損失はとくに大きくなります。

採用にかけた費用と時間を回収する前に人材を失うと、現場の負担は一段と重くなります。本記事では、早期離職の実態を公的データで示し、企業が被る損失と入社初期に効果がある防止策を解説します。

早期離職は「入社1年目」と「採用・育成コスト」に集中する

早期離職対策で押さえるべき要点は2つです。

  1. 離職は入社1年目に最も集中する:大卒の3年以内離職率33.8%のうち、1年目だけで12.1%が離職している※1
  2. 損失は「辞めた事実」より「育てる前に辞めること」で膨らむ:採用費をかけて戦力化する前に離職されると、採用コストと育成投資を回収できない

対策の焦点は、入社後の早い段階で辞める理由を取り除くことです。

なお、自社の離職率がどの水準にあるかは、まず計算して把握することをおすすめします。

※1 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2026年6月22日閲覧)

データで見る早期離職・短期離職の実態

早期離職は一部の業界や企業だけの問題ではありません。公的データが、その広がりと「1年目への集中」を示しています。

新規学卒者の3年以内離職率は大卒33.8%・高卒37.9%(2022年3月卒)

厚生労働省が2025年10月に公表した最新データ(2022年3月卒)では、就職後3年以内の離職率は次のとおりです※2。

学歴3年以内離職率うち1年目2年目3年目
大学卒33.8%12.1%11.9%9.9%
高校卒37.9%17.9%11.5%8.5%

※2 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2026年6月22日閲覧)

大卒・高卒のいずれも、離職が最も多いのは1年目です。大卒は1年目だけで全体の3分の1超が離職しました。高卒は半数近くが1年目に集中しています。早期離職対策が「入社初期の数か月」を主戦場とする理由はここにあります。

新卒の離職率データをさらに詳しく見たい方は、専用記事も参考になります。

3年未満離職の3分の1は「1年未満」

労働政策研究・研修機構(JILPT)が厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査」を分析した資料(2021年3月発行)によると、初職が正社員だった人のうち、入社3年未満で離職した割合は19.9%(男性17.0%・女性23.3%)です※3。離職者数の内訳から見ると、約3分の1が1年未満での離職です(図表5-2-1より算出)。

学卒就職者に限らず、中途採用でも同じ構造が起こり得ます。早期離職は「採用と入社初期の設計」の問題として捉えましょう。

※3 出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状『平成30年若年者雇用実態調査』より(資料シリーズNo.236)」(2026年6月22日閲覧)

早期離職が企業にもたらす損失

「辞めた1人」の影響は、欠員という目に見える事実だけではありません。早期離職には、回収できない投資と、間接的な損失が伴います。

損失は3つの層に分かれる

損失の種類内容早期離職でとくに大きくなる理由
採用コストの損失求人広告費・人材紹介手数料・選考にかかる人件費戦力化前に辞めるため、投じた採用費を回収できない
育成コストの損失研修費・OJTにかける先輩社員の工数教えた直後に辞めると、育成投資がそのまま消える
間接的な損失残ったメンバーの負担増・採用のやり直し・職場の士気低下短期間での欠員は再募集サイクルを早め、現場を疲弊させる

従業員30〜300名規模の企業では、1人の早期離職が現場に与える負担が、大企業より重くなりやすい傾向があります。少人数のチームで欠員が出ると、残ったメンバーへの負担が集中しやすいためです。

新卒採用では、求人広告費・人材紹介手数料・選考にかかる人件費を合わせると、1人あたり数十万円規模の採用費がかかるのが一般的です。

この採用費に、研修費・受け入れる先輩社員の工数、欠員期間の機会損失が積み上がります。早期離職の損失は「採用費+育成費+間接損失」の合計でとらえると実態に近づくでしょう。

早期離職はその後のキャリアにも影響する

同じJILPT資料によると、初職が正社員で離職を経験した人の調査時点の正社員比率は、男性71.4%・女性36.7%にとどまります※4。早い段階での離職は、本人のその後の働き方にも影響しうることを示すデータです。

早期離職を減らすことは、企業の投資回収と、社員のキャリアの双方にとって意味があります。

損失額を自社で試算する計算式

1人あたりの損失額 = 採用単価 + 育成コスト + 欠員期間の機会損失 ・採用単価:求人広告費・紹介手数料・選考人件費の合計(採用手法により数十万円規模になることが多い) ・育成コスト:研修費+OJTにかかる先輩社員の時給×指導時間 ・機会損失:欠員ポストが生むはずだった粗利、または再募集までの売上減

金額は採用手法・人件費・職種で大きく変わります。固定の相場ではなく、この枠組みに自社の実数を入れて算出してください。

※4 出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状『平成30年若年者雇用実態調査』より(資料シリーズNo.236)」(2026年6月22日閲覧)

なぜ早期離職・短期離職が起きるのか

早期離職の理由は、勤続後の離職とは傾向が異なります。

早期離職の理由は「労働時間」「人間関係」「仕事のミスマッチ」が上位

JILPT資料では、初職が正社員だった人の3年未満離職について、辞めた理由が学歴別に集計されています(図表5-2-3)。主な項目を抜粋します(複数回答)※5。

離職理由大学・大学院卒(男性)大学・大学院卒(女性)
労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった40.9%38.1%
仕事が自分に合わない32.3%28.5%
人間関係がよくなかった30.7%31.4%
ノルマや責任が重すぎた19.1%24.8%
会社に将来性がない20.3%14.1%
賃金の条件がよくなかった20.6%15.1%

※5 出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状『平成30年若年者雇用実態調査』より(資料シリーズNo.236)」(2026年6月22日閲覧)

同資料は、3年以上勤続後に辞めた人と比べると、3年未満で辞めた人は「人間関係」「仕事が自分に合わない」を理由に挙げる割合が高いと指摘しています。さらに1年未満離職では、人間関係を挙げる人がより多くなります。

後継の令和5年若年者雇用実態調査(2024年9月25日公表)でも、傾向は同様です※6。初めて勤務した会社をやめた理由の上位は次のとおりです。

  • 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった:28.5%
  • 人間関係がよくなかった:26.4%
  • 賃金の条件がよくなかった:21.8%
  • 仕事が自分に合わない:21.7%

1年未満の離職では、「人間関係」を挙げる割合が最も高くなっています。

※6 出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(2026年7月3日閲覧)

早期離職の原因は4つに整理できる

データをふまえると、早期離職の原因は次の4つに集約できます。

  1. 入社前後のギャップ(ミスマッチ):仕事内容・働き方・社風が入社前のイメージと異なる状態(「仕事が自分に合わない」の背景)
  2. 人間関係・受け入れ体制の不足:相談できる相手がおらず放置される状態(1年未満離職で人間関係が増える点と符合)
  3. 労働条件への不満:労働時間・休日・負荷が想定と乖離している状態
  4. 役割・期待値の不明確さ:求められていることが曖昧で、ノルマや責任を過重に感じやすい状態

離職率が高い会社に共通する構造的な原因は、別記事で体系的に解説しています。

早期離職を防ぐ対策(コスト別・効果の出る順)

原因がわかれば、対策は具体化できます。ここでは入社初期に効果が出やすい施策を、コストと効果の目安とともに紹介します。優先度は「コストが低く効果が早い順」です。

優先度施策原因コスト効果が出るまで
1RJP(入社前の現実的な情報提供)ミスマッチ低中期
2受け入れ・1on1の仕組み化人間関係・受け入れ不足低短期
3オンボーディング設計の整備ミスマッチ・役割不明確中中期
4パルスサーベイで初期の不満を把握全般(早期発見)中短期
5労働時間・業務負荷の見直し労働条件中〜高中期

対策1:RJPで入社前のギャップを減らす

RJP(Realistic Job Preview)は、よい面だけでなく仕事の大変さや実態も事前に伝える考え方です。入社前後のギャップを縮め、「思っていたのと違う」による早期離職を抑えます。選考段階での職場見学や、現場社員との面談が有効です。

対策2:受け入れと1on1を仕組みにする

入社直後の「放置」は短期離職の引き金になり得ます。最初の数か月は、上司や先輩との1on1を定例化し、相談できる相手を明示しておきましょう。仕組みにしておけば、担当者の力量に左右されず機能します。

対策3:オンボーディングを設計する

受け入れを場当たりにせず、最初の3か月で「何を身につけ、誰に相談し、いつ何を期待されるか」を設計しましょう。役割と期待値が明確になると、過重感や手持ち無沙汰による離職を防げます。

対策4:サーベイで不満を早期に把握する

早期離職の予兆は短期間で現れます。パルスサーベイで入社初期のコンディションを定点観測し、不満が小さいうちに対処しましょう。退職の兆候を上司がどう察知し対応するかは、以下の記事で詳しく扱っています。

対策5:労働条件・業務負荷を見直す

労働時間・休日・負荷は、データ上も離職理由の最上位です。慢性的な長時間労働や過重なノルマがある場合、個人の頑張りでは解決しません。業務分担や目標設定の見直しが必要です。

退職を防ぐ施策全体の体系と優先順位は、施策一覧の記事で解説しています。

定着を継続的に高める仕組みづくりは、リテンションマネジメントの考え方が参考になるでしょう。

早期離職対策で陥りやすい失敗パターン

良かれと思った施策が逆効果になることもあります。ここでは、現場で起こりがちな失敗を挙げます。

失敗1:採用時によい面しか伝えない

魅力を強調しすぎると、入社後のギャップが大きくなり、かえって短期離職を招きます。RJPの観点で大変な面も率直に伝えると、結果的に定着につながりやすくなります。

失敗2:受け入れを現場任せにする

オンボーディングを仕組みにせず現場任せにすると、配属先によって受け入れの質にばらつきが生じます。このばらつきは、人事が設計で防ぐべき領域です。

失敗3:辞めてから理由を聞く

退職面談で初めて理由を把握するのでは手遅れです。在職中のサーベイや1on1で、不満が小さいうちに拾う仕組みが必要です。

失敗4:原因を特定せず施策だけ増やす

人間関係が原因なのに労働条件だけ手を入れる、といったずれた対策は効果が出ません。まず自社の離職データと理由を把握し、原因に合った施策を選びましょう。

施策を支えるツールやサーベイの選び方は、選定ポイントを別記事で解説しています。

早期離職に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、早期離職についてのよくある質問に回答します。

A. 明確な法的定義はありませんが、一般に入社からおおむね3年以内の離職を早期離職と呼びます。なかでも1年以内の離職を短期離職と表現することが多く、採用直後の人材を失う点で企業の損失がとくに大きくなります。

A. 厚生労働省の最新データ(2022年3月卒)では、就職後3年以内の離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%です※7。いずれも1年目の離職が最も多く、大卒で12.1%、高卒で17.9%が1年目に離職しています。

A. JILPTの分析によると、3年未満で辞めた人の理由は「労働時間・休日の条件」「仕事が自分に合わない」「人間関係」が上位です※8。勤続後に辞める人と比べ、人間関係や仕事のミスマッチを挙げる割合が高い点が、早期離職の特徴です。

A. まずは自社の離職率を計算し、どの層がいつ離職しているかを把握しましょう。そのうえで、入社前のギャップを減らすRJPと、入社直後の受け入れ・1on1の仕組み化から着手すると、低コストで早く効果が出やすくなります。

A. 起こります。早期離職は新卒に限った現象ではなく、入社前後のギャップや受け入れ体制の不足という構造は中途採用にも共通します。職種や即戦力への期待が高いぶん、役割と期待値のすり合わせがとくに重要です。

※7 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2026年6月22日閲覧)
※8 出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状『平成30年若年者雇用実態調査』より(資料シリーズNo.236)」(2026年6月22日閲覧)

まとめ:早期離職対策は「入社初期」と「原因特定」で決まる

早期離職・短期離職は、入社1年目に集中し、採用・育成コストを回収する前に人材を失う点で損失が大きい問題です。

  • 大卒3年以内離職33.8%のうち1年目が12.1%※9
  • 早期離職の理由上位は「労働時間」「仕事のミスマッチ」「人間関係」※10
  • 対策は、RJP・受け入れの仕組み化・オンボーディング設計を、コストの低い順に進める

※9 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2026年6月22日閲覧)
※10 出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状『平成30年若年者雇用実態調査』より(資料シリーズNo.236)」(2026年6月22日閲覧)

まず自社の離職率を計算し、辞めている層と理由を特定するところから始めましょう。


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