離職防止の施策15選|コスト別・効果が出る順に解説

この記事でわかること

  • 離職防止は福利厚生の追加ではなく、原因特定、関係・労働条件、制度の順で進めるという施策の順番
  • 厚生労働省の調査では労働条件・人間関係・収入が上位に並び、離職理由には男女差があること
  • 原因特定、関係・労働条件の改善、制度、報酬・福利厚生の順にコストと効果で並べた15の施策
  • 原因に合った施策を小さく試す進め方の5ステップ、測るべき指標、離職防止でよくある失敗パターン

離職防止の施策15選を、コスト別・効果が出る順に並べて解説します。

離職防止で最初にやるべきは、福利厚生の追加ではなく「離職の原因特定」です。厚生労働省の調査では、女性は労働条件・人間関係が、男性は給料等の収入が、離職理由の最上位級に来ています。このように、離職の原因は一様ではありません。

本記事では、離職理由のデータからそれぞれに効果のある15の施策を、コストと効果で比較しながら紹介します。

離職防止は「原因特定 → 関係・労働条件 → 制度」の順

施策を紹介する前に、まずは行動の優先順位を紹介します。

  1. 離職の原因を特定する(サーベイ・1on1・退職者ヒアリング)
  2. 上司との関係と労働条件を改善する(離職理由に最も直結し、低〜中コストで着手できる)
  3. 評価・キャリア・働き方の制度を整える(中期で効果が出る)
  4. 報酬・福利厚生を見直す(効果は出るがコストが高く、単独では効果が出にくい)

単一の施策では効果が出にくいため、原因データにもとづいて施策を選びましょう。

なお施策を選ぶ前提として、自社の離職率が高いのか普通なのかを把握しておく必要があります。離職率の出し方は「離職率の計算方法とは|計算式・平均値を厚労省データで解説」で確認できます。

離職の主な原因:データで見ると「労働条件・人間関係・収入」が上位

まずは、公的データで離職の原因を押さえましょう。

離職理由の内訳|女性は労働条件、男性は収入が最多

離職理由は、男女で上位に来る項目が異なります。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、転職入職者が前職を辞めた理由(個人的理由)の男女別割合は次のとおりです※1(「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」を除く上位)。

辞めた理由男性女性
労働時間・休日等の労働条件が悪かった8.5%12.9%
職場の人間関係が好ましくなかった8.9%11.5%
給料等収入が少なかった9.9%8.6%
会社の将来が不安だった6.9%4.3%
仕事の内容に興味を持てなかった5.2%4.6%
能力・個性・資格を生かせなかった5.2%3.9%

※1 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)

ポイントは3つあります。

  • 女性は労働条件(労働時間・休日)が最多で、人間関係が2位:長時間労働や休みの取りにくさ、直属の上司との関係が離職の引き金になる
  • 男性は(定年等を除く個人的理由では)給料等の収入が最多:市場水準との乖離は無視できない要因になる
  • 男女を通して「関係・条件・収入」が上位に並ぶ:原因は一様ではなく、給与を上げれば全部解決するわけではない

離職の原因をさらに深掘りする場合は「離職率が高い会社の原因」、新卒・若手の早期離職に絞る場合は「早期離職・短期離職とは|企業の損失と原因・防ぐ対策」もあわせてご覧ください。

企業規模による違い|規模が小さいほど離職率が高い

離職率は、企業規模によっても大きく変わります。就職後3年以内の離職率は、大卒33.8%・高卒37.9%でした※2。事業所規模別に見ると、大卒で1,000人以上の事業所が27.0%なのに対し、5人未満は57.5%です※2。規模が小さいほど離職率が高い傾向が明確なため、中小企業ほど施策の優先度づけが重要になります。

新卒・若手の離職率の推移は「新卒の離職率データと推移」、規模別・業界別の詳しい数値は「業界別の離職率データ」で確認できます。

※2 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2026年6月22日閲覧)

離職防止の施策15選(コスト別・効果が出る順の一覧表)

本記事では15の施策を離職理由データにもとづき、効果が出やすいと考えられる順に並べ、コストと効果の出方をまとめました。自社の離職原因に当てはまる施策から確認してください。

#施策原因コスト効果の出方優先度
1従業員サーベイで原因を可視化全般(原因特定)低〜中即効〜中期★★★
21on1ミーティングの定着人間関係・将来不安低即効〜中期★★★
3退職者ヒアリング(退職面談)全般(原因特定)低即効★★★
4管理職のマネジメント研修人間関係中中期★★★
5長時間労働の是正・残業削減労働条件低〜中即効〜中期★★★
6休暇の取得促進労働条件低即効★★
7オンボーディング(受け入れ)整備早期離職・関係低〜中中期★★★
8評価制度の納得性向上将来不安・収入中中期★★
9キャリアパスの明示将来不安・仕事内容低〜中中期〜長期★★
10適材適所の配置・異動仕事内容・能力発揮低中期★★
11柔軟な働き方(リモート・時短等)労働条件中中期★★
12社内コミュニケーション活性化人間関係低中期★
13表彰・称賛(承認)の仕組み仕事内容・関係低中期★
14給与・賞与制度の見直し収入高中期★★
15福利厚生の拡充収入・労働条件中〜高長期★

【最優先】まず原因を特定する施策(#1〜3)

原因がわからないまま施策を打つのは、症状を見ずに薬を出すようなものです。まずはここで紹介する3つの施策で原因を可視化しましょう。

1. 従業員サーベイで原因を可視化

従業員サーベイは、社員の不満を部署別・要因別に数値で可視化する施策です。エンゲージメントサーベイやパルスサーベイを使い、匿名性を担保したうえで四半期や月次の頻度で定点観測します。原因が特定できていない段階から使えるため、最初に着手する価値があります。

サーベイの種類や比較軸は「離職防止ツールの選び方|サーベイの種類・比較軸・規模別に解説」で解説しています。

2. 1on1ミーティングの定着

1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に対話する場をつくる施策です。週次〜隔週・30分を目安に実施し、業務報告ではなく本人の悩みやキャリアを聞く時間にします。追加のコストがかからないため、原因特定と関係改善を同時に進められます。

面談を含む定着施策の全体像は「リテンションマネジメントの実践」もあわせてご覧ください。

3. 退職者ヒアリング(退職面談)

退職者ヒアリングは、辞める人の本音を次の離職防止に生かす施策です。利害関係のない人事や第三者が、「直属の上司」「処遇」「業務量」の3つの観点で聞き取ります。在籍者からは出にくい本音が得られるため、少ない工数で原因の仮説を立てられます。

【高効果・低中コスト】関係と労働条件を改善する施策(#4〜7)

ここで紹介する施策は、離職理由の上位に直接効果を発揮するため、優先度が最も高くなります。

4. 管理職のマネジメント研修

管理職のマネジメント研修は、直属の上司との関係を改善する施策です。上司との関係は離職理由を大きく左右するため、傾聴・フィードバック・1on1の技術を管理職に習得させます。人事が制度を整えても、運用する管理職の技術が伴わなければ機能しません。

退職の兆候を早期に察知する対応方法は「退職の兆候と上司の対応」で解説しています。

5. 長時間労働の是正・残業削減

長時間労働の是正は、労働条件への不満に直接働きかける施策です。残業の見える化、業務の棚卸し、ノー残業デーなどで負荷を下げましょう。労働条件は離職理由の上位にあるため、低〜中コストでも即効性を期待できます。

6. 休暇の取得促進

休暇の取得促進は、休みの取りにくさを解消する施策です。有給取得率の目標設定や取得状況の見える化で、休みやすい空気をつくります。新規のコストがほとんどかからず、今日から着手できます。

7. オンボーディング(受け入れ)整備

オンボーディングの整備は、入社初期のミスマッチや孤立を防ぐ施策です。入社後3カ月の受け入れを設計し、メンター制度と定期面談で立ち上がりを支えます。早期離職は入社直後の数か月に集中するため、この時期の設計が定着を左右します。

設計の手順は「オンボーディングの設計」で詳しく解説しています。

【中期で効果が出る】制度・配置・働き方の施策(#8〜13)

ここで紹介する施策は、効果が出るまでに時間はかかりますが、定着の土台をつくれます。

8. 評価制度の納得性向上

評価制度の納得性向上は、「何を頑張れば報われるか」を社員に見えるようにする施策です。評価基準を明示し、評価者がフィードバック面談でその根拠を説明します。将来への不安が下がるため、収入への不満の受け止め方も変わるでしょう。

9. キャリアパスの明示

キャリアパスの明示は、「この会社で成長できる像」を描けるようにする施策です。等級・役割・育成ルートを言語化し、どの段階で何が求められるかを社員に示しましょう。効果が表れるのは中期から長期にかけてです。

10. 適材適所の配置・異動

適材適所の配置・異動は、強みと業務のミスマッチを解消する施策です。面談や社内公募を通じて、本人の強みが生きる仕事に配置し直しましょう。制度を新設せずに始められるため、低コストで取り組めます。

11. 柔軟な働き方(リモート・時短等)

柔軟な働き方は、ライフイベントと仕事を両立できる選択肢を用意する施策です。リモートワーク・時短勤務・フレックスタイムなどを整えましょう。労働条件が理由の離職、とくに育児や介護と重なる時期の離職を抑えられます。

12. 社内コミュニケーション活性化

社内コミュニケーションの活性化は、職場の孤立を防ぐ施策です。部署横断の交流の場や、オープンな情報共有の仕組みをつくります。人間関係が理由の離職に効果があり、低コストで着手できます。

13. 表彰・称賛(承認)の仕組み

表彰・称賛の仕組みは、金銭以外の動機づけをつくる施策です。成果や貢献を見える形で称え、日常的に承認が伝わる状態にします。報酬を上げずに、仕事のやりがいと人間関係の両方に働きかけられます。

【慎重に・高コスト】報酬・福利厚生の施策(#14〜15)

この2つの施策は効果が出るものの、コストが高く、単独では離職が止まりにくい領域です。原因が「収入」に明確に偏っている場合は優先しましょう。

14. 給与・賞与制度の見直し

給与・賞与制度の見直しは、市場水準との乖離を是正する施策です。固定費が増えるため、評価制度の納得性向上(#8)とセットで設計します。基準が伴わないまま金額だけを上げると、増えたコストに見合う納得感が得られません。

15. 福利厚生の拡充

福利厚生の拡充は、住宅手当・育児支援・自己啓発支援などを整える施策です。人間関係や労働条件の不満を覆い隠す代わりにはならないため、自社の離職原因との適合を必ず確認しましょう。効果が表れるのは長期で、コストは中〜高です。

効果を出すための進め方:原因に合った施策を小さく試す

施策を実施したとしても、進め方を誤ると効果が出ません。原因に合った施策を選び、小さく試してみるのが基本です。

進め方の5ステップ

離職防止の施策は、次の5ステップで進めましょう。

  1. 現状把握:離職率を算出し、業界・規模水準と比べる
  2. 原因特定:サーベイ(#1)・退職者ヒアリング(#3)で自社の上位原因を1〜2件に絞る
  3. 施策の選択:上位原因に効果がある★★★施策に絞り、あれもこれも手を広げない
  4. 実行と測定:3〜6カ月で効果を測り、離職率だけでなくサーベイのスコアや有給取得率も指標にする
  5. 改善:効果が出た施策を広げ、出なかった施策は原因の再点検に戻る

効果の測り方|離職率だけを見ない

効果の測定は、「離職率」だけにこだわらないことがコツです。離職率は測定できるまでに時間がかかる遅行指標のため、効果の兆しをつかむには次の先行指標もあわせて確認しましょう。

  • サーベイのエンゲージメントスコア:不満の改善度合いを定点で把握する指標
  • 有給取得率:働き方の余裕度を映す指標
  • 残業時間:労働条件の改善度を映す指標
  • 1on1の実施率:関係構築の施策が回っているかを示す指標

これらを離職率に重ねて見ると、3〜6カ月で効果が出ているかどうかを判断しやすくなります。

離職防止でよくある失敗パターン

現場で発生するよくある施策の失敗パターンは、以下のとおりです。

  • 原因を見ずに福利厚生から入る:人間関係や労働条件が原因なのに、手当やイベントを増やしても離職は止まりにくく、コストだけが残る
  • サーベイを取って放置する:結果をフィードバックせず改善も起きないと、「答えても変わらない」という不信を招き、逆効果になる
  • 1on1が業務報告会になる:進捗確認の場になると、本人の悩みやキャリアの話が出ず、関係改善につながらない
  • 管理職を放置したまま現場任せにする:人事が制度をつくっても、運用する管理職のスキルが伴わなければ機能しない
  • 給与だけで引き留めようとする:一時的に止まっても、関係や働き方の不満が残れば再び離職に向かう
  • 助成金や制度を入れただけで満足する:導入して終わりにすると運用が続かず、効果が積み上がらない

失敗の多くは「原因と施策のずれ」と「やりっぱなし」に集約されます。原因特定と測定をセットで考えましょう。

離職防止に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、離職防止の施策についてのよくある質問に回答します。

A. 福利厚生の追加ではなく、離職の原因を特定することです。従業員サーベイ・1on1・退職者ヒアリングで自社の上位原因を1〜2個に絞ってから施策を選ぶと、無駄なコストを避けられます。

A. あります。1on1の定着、退職者ヒアリング、休暇取得の促進、適材適所の配置などは低コストで着手できる施策です。離職理由の上位には人間関係・労働条件が並ぶため、低コスト施策でも効果が期待できます。

A. 給与は有力な離職理由の一つですが、それだけが原因とはいえません。男性では給料等の収入が個人的理由の最多となる一方、女性では労働条件・人間関係が上位です※3。給与だけで引き留めても、関係や働き方の不満が残ると再び離職に向かう傾向があります。

A. できます。むしろ、事業所規模が小さいほど離職率が高い傾向があるため、優先度づけが重要になります※4。原因を絞り、★★★の低〜中コスト施策から小さく始めましょう。

A. 離職率だけでなく、サーベイのスコア、有給取得率、残業時間、1on1の実施率など複数の指標を組み合わせて確認します。3〜6カ月の期間で効果が出た施策を広げ、出なかった施策は原因の再点検に戻します。

※3 出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月26日閲覧)
※4 出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2026年6月22日閲覧)

まとめ:原因に合った施策から、優先度順に着手する

離職防止のための施策の回し方は、以下の要領でおこないましょう。

  • 最初にやるのは原因特定(サーベイ・1on1・退職者ヒアリング)
  • 次に上司との関係と労働条件の改善(離職理由の上位に直接効果を発揮し、低〜中コストで着手できる)
  • 報酬・福利厚生は効果が出るがコストが高いため、原因が収入に偏るときに優先する

自社の離職原因がどこにあるのかを可視化することがまず最優先なので、そこを見誤らないようにすれば、自ずと効果的な対応策が見えてくるでしょう。


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